日々の活動やニュースに対する考え、視察の報告などをブログにまとめています。

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神谷宗幣 (かみやソウヘイ)
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イスラエル視察研修 【平成29年11月14〜22日】

最近の動向, 最近の動向 |

龍馬プロジェクトの海外視察でイスラエルに行ってきました。

2010年に会を結成して以来、会長を務める私の運営方針で、会として毎年1回は必ず海外視察にいくようにしています。

日本だけをみて、日本の将来を考え考えることはできないという想いがあるからです。

これまで、ドバイ(アラブ首長国連邦)、シンガポール、マレーシア、台湾、アメリカ、インド、スリランカ、中国、スイス、デンマークなどを回ってきて、今回のイスラエルにつながります。

 

今回の視察テーマは、
・イスラエルの建国の経緯とその精神を学ぶ
・イエス・キリストの足跡を辿る
・地域共同体のキブツについて学ぶ
・イスラエルの産業とスタートアップを学ぶ
というものでした。

以下それぞれのテーマについて簡単に報告します。


【建国の経緯とその精神】

研修は、ネゲブ砂漠にあるベングリオンの砂漠の家の訪問からスタートです。

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詳細はこちらのblogをご覧下さい。

https://ameblo.jp/jinkamiya/entry-12329633771.html
イスラエル建国の立役者であるベングリオンが晩年に、砂漠の中で農業をしながら次の世代に伝えたかったメッセージは、
「若者よ、困難と向き合い、チャレンジ精神を忘れずに、国を富まして守っていけ」ということだったと感じます。

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また旅の最終日にはテレアビブで、1948年5月14日にベングリオンらがイスラエルの独立宣言を出した記念ホールを訪問し、お話をきいてきました。

イギリス統治時代からテレアビブを中心にパレスチナに移住し、ホロコーストなども経験しながらなんとか「ユダヤ人によるユダヤ人の国」を作ろうとし、軍隊も持たないまま独立戦争をスタートしたイスラエル人の気概はヒシヒシと感じました。

その証拠に記念館では、40代の女性のガイドの方が、自分が経験したことではないのに、感極まって泣きそうな様子で独立宣言や戦争の話をしてくれるのです。
「イスラエルが建国できたことは奇跡に近いことだった」という彼女のコメントをきいて、イスラエル人の根底にある国に対する気持ちを感じました。

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一世紀にローマ軍に亡ぼされたマサダの砦にもいきました。マサダの戦い以来約1900年、ユダヤ人の国はなく、ユダヤ人は世界中で迫害されたという歴史をイスラエル人は若者からお年寄りまでが共有しています。

イスラエル人は男女ともに18歳から軍隊にはいり、このマサダで入隊の宣誓を行うからです。

イスラエル人は歴史を語り継ぎ、自分たちのアイデンティティをつなげていることが再確認できました。
【イエス・キリストの足跡】

イスラエルといえば、やはりユダヤ教とキリスト教です。中でも世界に広がったキリスト教がどんな場所でどうやって始まったかを知っておくことは、国際的な教養になると考え、昨年私が訪問し印象深かった場所を回ってきました。

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行程はこちらのblogに

https://ameblo.jp/jinkamiya/entry-12329846511.html

30歳の青年がたった3年ほど、車で2〜3時間の距離の地域で布教したことが、弟子により世界に広がったわけです。
私はイエスの活動の足跡を辿りながら、人間の可能性を感じました(それは釈迦にもマホメットにもいえることかもしれません)。

この可能性を仲間にも共有できた研修だったと思います。

 

【地域共同体のキブツ】

今回は3つのキブツを訪問させてもらい、その歴史や役割を学んできました。

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詳しくblogに書いたのでこちらをご覧下さい

https://ameblo.jp/jinkamiya/entry-12329985801.html

キブツはただ生活するための共同体ではなく、開拓のための拠点であり、また周囲の国からイスラエルを守るための前線基地でもあったことがよくわかりました。

私有財産を持たない原始共産主義の平等な共同体と聞くと、日本人は「武器など持たない平和な生活」と連想してしまいそうですが、キブツの歴史は自然との戦いであり、外国との戦いなんですね。

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そこをベースにして、民主的な運営、自給自足の生活を目指しているわけです。
そもそも自給自足しなければ生き残っていけないというサバイバル精神がキブツの運営理念に含まれていることがよくわかりました。

 

【イスラエルの産業とスタートアップ】

今回はこのテーマで4つの視察をお願いしました。

まずその一つは、国軍退役者でつくる企業グループとの意見交換です。

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お越し頂いた皆さんからは、防災・危機管理のサービスと水の精製・配給のサービスについて教えて頂きました。

イスラエルの防災の範疇には、当たり前にミサイルを撃ち込まれるというケースが入っています。実際に何度も撃ち込まれているからです。

ただ、既にミサイルの迎撃システムはできていて、ミサイルが飛んできても人命に関わらない地域に落ちる場合は迎撃も警報もでないとのこと。

敵の安物ミサイルを最高性能のミサイルで迎撃するのはコストに合わないと考えているからです。

彼らが重視しているのは、危機が起こった時、もしくは危機が去った後に、如何に迅速に国民に情報を伝えるかということで、そのためのシステム構築を国と民間で組んでどうつくるかということでした。

そこで重要になるのは国が如何に早く危機の情報を国民に公表するかということだったので、こちらのメンバーからは「国は危機の状況に関わらず、全ての情報を国民に公表するのか」と質問すると、「当たり前に公表する」とのこと。逆に「日本はしないのか?人の命をどう考えているのか」と聞き返され、説明に困りました。

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二つ目は、タグリットイノベーションセンターという場所を訪れて、イスラエルの最先端技術を持った会社の展示をたくさん見せていただきました。

展示には、インフラから農業、介護、ものづくり、軍事に至るまで様々な分野のものが並んでいます。

日本との1番の違いは、「軍事」に関わる研究の展示があることだと思います。

建国史やキブツのところでも書きましたが、イスラエルの大命題は「国を守ること、生き残ること」です。

全ての産業がそこを軸にできていることが今回よくわかりました。
ですから軍事技術を磨くことは当たり前なんですね。
わずか800万人ほどの人口で億を超える国々と渡り合っていかねばならないのがイスラエルです。

人海戦術では戦えないので如何に最新技術を使って敵を倒すかを考え、そこで生まれた技術を民間転用していることも今回よくわかりました。

日本は東大を筆頭に、軍事に繋がる研究はしないと堂々と宣言していますが、これほど愚かなことはありません。
技術で他国を圧倒してしまえば、戦わずして平和を維持できますし、その民間転用は日本の産業の競争力強化に繋がるでしょう。

技術で負けて、産業の競争にまければ、強国のいいなりになるしかないのが、残念ながら今の世界です。

日本というぬるま湯の中で、変な軍事アレルギーをもつ亡国の徒には、是非イスラエルを訪れて、彼らの気概を学んで欲しいと強く強く思いました。

さらにイノベーションセンターでは、なぜイスラエルがシリコンバレーにも劣らないスタートアップのメッカになっているかを聞きました。

事前情報で、イスラエルのスタートアップのきっかけは1991年のソビエト崩壊にあるときいていました。
どう繋がるかというと、ソ連にいたユダヤ教徒が100万規模でイスラエルに移住し、彼らに仕事を作るために、官民から投資を集め、スタートアップを奨励したのがその始まりだったといいます。
さらにソ連崩壊はデタントにつながり、規模を縮小した国軍の退役者らが軍の技術を民間転用してスタートアップに走ったことも同期としてあげられます。

しかし、その波がどんどん大きくなったのは、やはりイスラエルが小さい国で、天然資源もなく、地政学的にも危うい位置にあるため、どんどん技術を磨きビジネスを作っていかないと国が維持できないということがスタートアップが盛んな1番の理由だと、解説員の24歳の可愛らしい女性が胸を張ってプレゼンしていました。

さらに言うとイスラエル人は、技術を磨いて、世界に繁栄と平和を広げたいと強く考えているとも。こうしたことを真っ直ぐにいえるのもイスラエルです。

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三つ目の訪問地は、インキュベーターためのオフィスを世界160箇所で運営する「We work」さんです。

こちらはシェアオフィスや独自のコミュニティーサイトを運営し、事業家の卵をネットワーキングしてビジネスのスタートアップなどを支援されています。

こちらの強みは世界160箇所の拠点を持つことで、メンバーになれば世界中のオフィスが使え、現地の起業家たちと交流ができます。

強調されていたのは、ネットでの交流よりもやはりテーマを決めた勉強会やレジャーイベントで起業家どうしが生のコミュニケーションをとることだということです。

やはりどんなに技術が発展しても、人と人とは会って話さねばなりませんね。
ユダヤ人はネットワークをつくり歴史の荒波を乗り越えてきました。
実は日本人もそれが得意だったはずなんですが、、、

「We work」さんは東京にも4つの拠点をもう直ぐオープンします。地方のインキュベーションオフィスの経営者の方はメンバーになって、地方と世界を繋ぐハブになってはどうかと思います。

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最後の訪問地は、サイバーセキュリティー提供するKELA社です。こちらは日本にも支社がありNTTにも技術提供しています。

私と共通の知人をもつドロンさんが、今回は「ダークネット」の存在とその対策についてプレゼンして下さいました。

「ダークネット」とは、ネット上で国や公的期間のチェックをうけずに、情報をやり取りできるサイトです。

昔からハッカーなどが使ってきたものですが、近年は仮想通貨の普及でますますその存在が注目されています。

ドロンさん曰く、ネットセキュリティといってもファイヤーウォールなどの対策では今や情報は守れないとのこと。
なぜならハッカー不正にシステムを壊すやり方ではなく、アクセスのパスワードなどを盗んで堂々とシステムに入ってくるやり方に切り替えているそうです。

プレゼンでは、ハッカーが情報を盗むやり方やそれをダークネットで売り買いする様子、そうした犯罪者をどうやって捕まえるかまでを教えてもらいました。

ドロンさん曰く、ハッキングなどの世界に魔法は存在せず、全てタネのあるマジックだと。だからその手口さえしっかり理解すれば対策は打てると教えて下さいました。

KELA社のスタッフは、元々モサドなど諜報機関エリートばかりで、元々安全保障のアタックやプロテクトをやっていたメンバーだそうです。
イスラエルの産業には全て国防や軍が関連することが今回嫌というほどわかりました。

そして戦後の日本がガタガタになった一つの理由も再確認できました。
【総括として】

この他にもイスラエルでは、中学校も訪問させてもらい、スタートアップを教える授業を見せて頂きました。

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そこでは、どんなビジネスをするかより先に、何のために、誰のためにビジネスをするかから考えさせていることに驚きました。

私がいろいろ聞き取りをしたところ、イスラエルでは教育と国軍はセットなんだと感じました。

国は子供たちの成績や性格をすべて把握し、18歳で軍に入り次第、優秀な人材には特別枠をつくり専門的な教育をして、幹部やエンジニアを育てます。

そして、軍役が終わるとそのエリートたちが民間に流れ、産業をつくり、また定期的に軍に召集され一定期間の訓練と称した同窓会に集まり、情報交換をしてネットワークを再構築しビジネスも拡大させます。

このように教育と軍事と産業が、「少ない数の国民で、国を守り発展させる」という思想で貫かれています。

ほかにもホロコーストに関しては、
その時代を生きた1代目、2代目はあまり話をしてこなかったそうで、
今の若者には家系図をかかせて、否が応でもホロコーストにあった親戚の存在を知らせます。

そして、高校生の30%は修学旅行でアウシュビッツに行き、自分たちを守ってくれる国がないとどうなるかを考えます。

こうした教育を受けた国民は、
「国を守るために何かを犠牲にしないといけない」という意識を当たり前にもっていて、日本のように個人のプライバシーがどうこうということはあまりないようです。

逆に政治ではいつも「安全か経済か」が争点で、いつも安全を重視してきたため、経済構造はいびつなところがあると聞きました。

それでもこの20年で経済規模は1.5倍以上の成長なんですから、日本とは大違いです。
世界の国々は、まるでバラモンのカーストのように流転しているという方がいます。

バラモン   = 聖者
クシャトリア = 武人
バイシャ   = 平民、商人
シュードラ  = 奴隷

そうした視点で、イスラエルを訪問して感じたのは、イスラエルは完全に武人の国だということでした。

全ての活動の基本に「生き残る」というテーマがしっかりとあり、そのためのシステムをつくっています。

一方日本はというと、

江戸時代はひょっとすると世界最高峰のバラモンレベルだったかもしれません。

それが明治維新で、クシャトリアに引きずり降ろされ、敗戦でバイシャに、

そして平成以降は思考停止する人が増えて、、、、

 

そして、誤解しないで頂きたいのは、私はイスラエルの全てが素晴らしいと思ってはいないということです。

パレスチナ人の立場に立ってみれば、問題もたくさんあるでしょうし、工作活動などは度を越したものもあると聞いています。

トータルでみれば、私は日本が世界で一番いい国だと考えていながら、外国から見習うところもあると思ってるわけです。

イスラエルは、かつて日露戦争に勝った日本をリスペクトし、その想いを受けてイスラエルの独立戦争を戦った武人を英雄と称えているんです。

国のために努力することは素晴らしいという価値観を、日本から学んだというイスラエル人がいるのに、今の日本はどうなっているんだといいたいのです。

千数百人の人口で敵に囲まれながら国を自立させた点においては、日本はイスラエルに学ぶところも大きいでしょう。

しかし、彼らが一番大切にする歴史においては、圧倒的に日本の方が勝っています。

現代では全く違うように見える日本とイスラエルですが、

まだまだ私も勉強中ですが縄文時代まで遡れば、共通点も多く見つかり、イスラエル人の方がそこをよく理解しているように私は感じています。

イスラエルにできて、日本にできないことは何もないのです。

むしろ、日本がしっかりとやれば、本当のシラス世界が実現できると思います。
それを信じて、これからも世界を周り、現状をつかみ、より良い一歩に向けての行動をおこしていきます。

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