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神谷宗幣 (かみやソウヘイ)
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アイスランド視察(平成30年5月19日~24日)

視察・研修報告 |

今回の海外視察は、少ない人口で国家運営をする国から日本の地方運営のヒントを探そうと、

人口35万人のアイスランドを視察してきました。

今回は、アイスランドについて早々、メンバー半分のスーツケースが届かないというトラブルに遭遇しました。

私のスーツケースも届かず、海外旅行のリスクや保険の重要性を再認識しました。
しかし、視察の内容は満足のいくものでした。

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到着してすぐに、日本でも教壇に立たれていたヨン・ステファン博士にアイスランドのプレゼンをしていただいたのですが、

これが非常に分かりやすく、一気にアイスランドに親しみがもてました。
以下は博士に教わった内容の要約。
アイスランドに公式に移民がやってきたのは874年で、その後移民たちは王による統治ではなく、

民主的な合議による自治を目指しました。これが930年に発足した世界最古の民主議会「アルシング」だといいます。
*しかし、後で聞くと874年前の遺跡が見つかっていて、その前から人が住んでいたことがわかっています。
アイスランドにやってきたのは海の民で、彼らの中から1000年頃にはアメリカ大陸に渡るレイフ・エリクソン

という人物が現れます。これはコロンブスによる「発見」より約500年も前のことなので、あまり信じられてはいませんでしたが、

最近のDNA鑑定で、インディアンの遺伝子が350人のアイスランド人の中に入っていることがわかり、真実と証明されたそうです。

歴史はどんどん変わっていきますね。
13世紀以降は、ノルウェーとデンマークの領土となっていたアイスランドですが、

1918年にデンマークの国王主権下の立憲君主国、アイスランド王国として独立し、

第二次世界大戦でデンマークがドイツに占領されたのを機に、1944年6月17日に共和国として完全な独立を果たしています。

本国の危機に乗じて独立するなんて、なかなかしたたかなところも持った国なんです。

そんなアイスランドの人口は約35万人。私の住む吹田市と同じくらいの人口です。

広さが北海道と四国を足したくらいありますから、一人当たりの占有面積は恐ろしい広さです。
そんなアイスランドは少子化にも関わらず、人口が増え続けています。

移民がどんどん来るんですね。

35万人の中で、100ヶ国語以上が話されているそうで、学校で使われているのは50ヶ国語以上。

一番多いのはポーランド移民で1万人もいるとのこと。

純粋なアイスランド人はどんどん減っていて、レストランに行ってもアイスランド語を聞くことはほとんどないそうです。

博士は、アイスランド語が消えつつあると心配されてました。

アイスランドで有名なのは、ジェンダーギャップが少ないこと。

女性は出産後100%職場復帰もするそうです。

とにかくギャップをなくそうと必死なようですが、、、それでも男女の賃金格差はどうしても出るようで、

毎日のようにそんなテーマが新聞紙面を賑わせているとのことでした。

ここは突っ込みどころ満載なんですが、今回はあえてテーマにしませんでした。

 

さらにアイスランドといえば、2008年の経済危機で国が破綻していながら、

2012年には復活し、今では一人当たり日本人の1.8倍のGDPをたたき出していることでも注目されています。

何か特別な努力があったのかと聞いたら、、、、

通貨安で、観光、アルミニウム工業、漁業が一気にのびたからだといいます。

「インフレ気味だし、アイスランド人が油断しているから、またそのうち破綻しますよ」

と楽観的におっしゃる博士が冗談を言っておられると思っていました。
後からわかったことなんですが、、、

アイスランド人は計画を立てたり、将来に不安を感じて備えたりすることがほとんどないそうです。

なぜかというと、アイスランドは極地のため、天候が変わりやすく、

計画なんか立てても上手く進むことがないからだとか。

冗談みたいな話ですが、本当に皆さんがそういいます。

悪く言えば短絡的なんですが、逆をいえば「今」を全力で生きることに専念してるんですね。

ここまでが最初のプレゼンでしたが、これを聞くだけでも私はアイスランドが好きになりました。

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2日目は、待望のブルーラグーンを堪能しました。

元々は地熱発電の排水だったものをためて、温泉にしたのが始まりです。

今では世界最大規模の温泉として世界中から観光客がきますが、

その入浴料はなんと10000円です。

入るだけで一万円の温泉?と聞くと日本人には信じられませんが、

アイスランドの物価が日本の2~2.5倍ほどなので、日本円にすると4000円くらいの感覚です。
物価が高いといえば、プリングルスは800円しましたし、タクシーに40分乗ったら25000円くらいしました。

人口35万人でなんでこんなに物価が高くて、経済がまわるんだ~と叫びたくなります。

「日本は人口が減るから、経済が駄目になる」といいますが、デフレギャップを埋めればGDP2倍も夢ではありません。

現にアメリカはこの20年でGDPを倍にしています。

日本の経済が良くないのを人口減少や少子化だけのせいにするのは絶対に間違いだと思いました。
一人当たりのGDPをまず倍までもっていきましょう。

アイスランドに出来て日本にできないことはない。

 

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ブルーラグーンのあとは、首都のレイキャビック市内を見学しました。

1986年10月にレーガン大統領とゴルバチョフ書記長が平和会談を行った、ホフジハウスが印象的でした。

アイスランドはアメリカとソ連のちょうど中間にある場所なんですね。

メルカトル図法の地図を見ているとわからない地政学のポイントです。

 

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視察3日目はまず、ヘトリスへイジの地熱発電所に行きました。

アイスランドは国内の電力供給の約80%を水力、約20%を地熱から得ており、火力・原子力発電所はありません。

原発を作ろうという動きはなかったのかと聞くと、どうしても原子力というと兵器をイメージするのがアイスランド人のようで、

一切議論にならないそうです。水力発電所ですら環境破壊になるからやめようという意見もあるくらいで、日本との違いに驚きました。

しかし、35万人の電気なら確かにこれでいけそうですね。

日本は人口が多いですから、使う電気も多いです。しかし、地方自治体単位であれば、電力の自給自足も可能なので、

いきなり1億2000万人と考えず、アイスランドのように30万人規模で区切って、

地域ごとの電力自給をそれぞれに考えたら、と思いました。

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ちなみにこの地熱発電所のタービンはすべて日本製でした(笑)

 

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次に訪問したのは、エコビレッジのソルへイマです。

もともとは孤児を育てるための施設だったのが発展して、現在は障がいを持った方も多数暮らす自給自足コミュニティになっています。

循環型の社会をつくることを目指しておられ、人間が自然と共生して生きるということを、

考えさせられるコンセプトや展示をたくさん見せていただきました。

一人の女性の想いから始まったコミュニティに年間数万人が見学にきます。

ここも大きなモデルになりました。

 

この日の締めは、グトルフォスの滝、

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ゲイシール間欠泉、

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シンクヴェトリル国立公園のゴールデンサークル観光です。

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私のお気に入りは、930年に世界初の民主議会「アルシング」がもたれたというシンクヴェトリル国立公園。

ここはなんともいえないパワーを感じましたし、こんな大自然の中で人が集まり意見を言い合った情景を想像すると、

人間の偉大さを感じました。

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視察最終日の4日目は、

朝一番アイスランド大学の教育部長からアイスランドの教育についてプレゼンを受けました。

アイスランドの教育目標を聞いてみたら、

グローバルな世界の中でのサステイナブルな教育をするといいます。

日本でも聞いたような話です。

教育の6つの柱は、

読み書き、生きる力、民主主義&人権、平等、健康福祉、創造性

だとのこと。

あえて特徴を見つけるとすれば、インクルーシブ教育に力を入れていることでしょうか。

また選挙や政治についてもしっかり教えるとも聞きました。

アイスランドも投票率が下がってきているそうですが、それでも80%が投票に行くそうです。

これもやはり教育の成果と考えられます。

教育課題としては、子供の読む力や書く力が落ちているということだそうです。

「アイスランドは武力ではなく、言論の力で独立した国なのに、その言論の基礎となる読み書きの力が落ちているのが危機的だ」

とおっしゃってました。

どこかの国に類似していますね。

 

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大学の次は学校訪問。

日本の小学生から高校生が通学する学校を視察しました。

行って最初に驚いたのは、雨の中子供たちが外で遊ばされていたことです。

デンマークでもそうですが、北欧では子供を元気に育てるために寒くても強制的に外に出すんですね。

日本も昔はそうでしたが、今はすっかり変わりましたね。

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学校内部は、欧米でよく見るオープンなスタイルでした。

授業も少人数制。クラスに2人は大人が入っている感じです。

壁に囲まれた教室で40人が勉強するという日本のスタイルは欧米ではないですね。

日本の学校の先生は大変だと、海外をみるとつくづく感じるのです。

 

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今回の訪問において私の中のメインは、海賊党のヨン・ソール・オラフル氏と意見交換することでした。

まずオラフル氏は、アイスランドの国会議事堂を案内してくださり、後半はアイスランドの政治について

詳しく教えてくれました。
アイスランドの海賊党は、2012年に設立され、

政策の柱に「政策の是非に関係なく集められたデータと知識をもとに政策を決定する」ということを柱に、

右派と左派に分断された政治体制の終焉、政治の透明化、知的所有権法の改正、ベーシックインカム導入などを

訴えている政党です。
私はこれらの政策に大変興味があったので、本当は一つ一つじっくり聞きたかったのですが、

政治家チームの視察ではないので、それはあきらめて、

2008年の経済破綻の後、憲法改正や銀行の経営者の処罰がどのように行われたのか、

また2012年に経済が正常化するまで国はどんな政策を積極的にとったのか、

という2点に絞ってお話を聞きました。
すると、憲法改正については国民がNGOのようなものを作り、
憲法改正案は出したものの、最高裁がそこから始まる手続きにNOを突きつけたため、改正の動きが止まってしまっていることがわかりました。

また、銀行の経営者の処罰についても不十分で我々がネットで
調べた情報も間違っていたことがわかりました。

北欧では、政治の不正や汚職に対して国民が大変厳しい判断をすると聞いていましたが、
アイスランドは例外で非常にそのあたりのチェックが弱いと聞いて驚きました。

さらに、2008年の経済破綻から2012年の経済の建て直しまで、
どんな政策をとったのかということに対しては、、、
柔軟に対応したというだけで、特に劇的な政策があったわけではないとのこと。

35万人しかいないからフレキシブルに対応できるのがアイスランドの強みだが、
逆に言えば不安定。

今は経済が安定しているけれども、またいつどうなるかわからない。
しかし、そんな不安定な時期こそ国民が本気で政治を考えるので、
その時がまた憲法を改正するチャンスだとも話しておられました。
参加者が国防について聞くと、
アイスランドには軍隊がなく、国防はNATOに依存しているとのこと。

35万人で軍隊を持っても意味をなさないともおっしゃってました。
しかし、国が大きくなり、人口が増えればまた話は変わってくるとも。

話し合いで独立を勝ち取ったという歴史を誇りにするアイスランドらしい
考え方だなあと思いました。

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最後に、「アイスランドの人は、一人ひとりが

未来やルールは自分でつくれると思っているのか?」

という質問をすると、
コーヒーでさえ飲みたいと思って、行動した人しか飲めない
人に必要なのは「熱意」と「信念」で、

それをもって行動し、小さな成功を積み重ねていくことが

大切だとアイスランド人は思っていると思う、
と答えてくれました。

損か得か、または、楽しいかどうか、

だけで行動する人が増えた日本にあって

「熱意」と「信念」が大切だなんていっても

あつ苦しいと言われるのがおちですが、

イージーゴーイングだと自称するアイスランドの政治家から

この言葉を聞けたことが深く胸に残りました。

そして今回の視察最後の訪問地は、

なんとアイスランドの大統領官邸でした。
お忙しい中、グズニ・ヨハンネソン大統領が時間をつくってくださり

我々の表敬訪問を受けてくださったのです。

大統領は歴史家でもあり、日本の歴史に興味があるとおっしゃっておられました。

また私の方からは、日本にも別府という温泉地があり、

ブルーラグーンを超えるような温泉施設を企画しています、と伝えると、

日本に行く機会があれば是非行ってみたいと!!

旅の最後の締めには最高のセッティングでした。

関係各位に感謝です。

4日間の短い訪問でしたが、

アイスランドで学んだ1番のことは、

「ネットを含めたメディアの情報を鵜呑みにしてはいけない」ということでした。

数年前の記事で、アイスランドの土地が中国資本に買い占められているというような情報も

ありましたが、現地にいって聞くとそんな情報はありませんでした。

また、憲法改正などの情報も事前に調べて行ったものとは違いました。
よく海外で日本を紹介した記事が出鱈目であることが報じられていますが、

逆もまたしかりということでしょう。
これだけ世界を回っていても、まだこんな状態です。

今回は大きな反省でした。そして現地の情報をしっかり調べることの大切さを認識しました。
それともう一つ。

日本はやはり大国だということです。

1億2000万人の人口は半端ではありません。

大国になったゆえに、それに甘えたりフリーライドする人が増えすぎて、

国が弱くなっているように感じました。

そろそろ護送船団はやめて、国民全体が世界の荒波にもまれる状況を作ることも必要なのでしょう。

しかし、そのために無節操に国を開けばいいというものでもありません。
本当は若者を積極的に海外に送りだして、「世界」のリアルを体感させるといいと思うのですが、

そういう教育や制度がないのが残念です。

もう少し、海外を回りながら良い仕組みを考えて提案したいと思います。

北海道の広さに35万人しか住んでいない国と

日本を比べるなということになるかと思いますが、

35万人だからこそフレキシブルに判断し、行動できる

というアイスランドの声は、

地方分権に繋がると思いました。
日本は規制や利権構造が多すぎて、身動きがとれない。

その結果、行動したい人が外に行ってしまうのではないでしょうか。
保守層に分権を嫌う人が結構いますが、

私は国全体を開くよりも先に、地方からダイレクトに

世界に打って出る環境をつくるべきだと

今回改めて感じました。

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