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神谷宗幣 (かみやソウヘイ)
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地図を広げて考える中国のグローバルな戦略

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明らかに裏に中国当局がいるでしょう。

上手く運河が出来たら、そこを通るのは商船だけですか?

世界地図を広げて、中国がつくる鉄道や運河、奪っている島に印をつけていけば、共産党の戦略がわかるはずです。

そして我々日本の位置はどこにあるか。

遠いニカラグアの話ももはや他人事ではない世界です!

怒号飛び交う抗議デモ…中国系企業のニカラグア運河建設の波紋、米もいらだち

2015.1.20 11:00更新

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 中国系企業がニカラグアで着手した運河建設が波紋を広げている。貧困に苦しむニカラグア政府は手放しの喜びようだが、資金面などで巨大プロジェクトの実現を危ぶむ声が強いほか、土地収用や環境破壊への懸念から地元では抗議活動が拡大。さらにパナマ運河に対抗する海上輸送の要衝を確保するとともに、米国と中南米諸国の分断を狙う中国の思惑が見え隠れし、論議を呼んでいる。

◆垂涎のニカラグア政府

 「建設をやめろ!」

 プラカードや横断幕を掲げ、シュプレヒコールを続けるデモ隊。警官隊との小競り合いに発展し、とうとう逮捕者も出た。ニカラグア各地で昨年から何度となく繰り返されている光景だ。昨年12月10日の国連人権デーには、ニカラグア全土から約5千人が首都マナグアに集結してデモ行進し、気勢を上げた。

 デモ隊が声をからして抗議するのは、ニカラグアを横断するように太平洋と大西洋を連結する大運河プロジェクト。2019年に運河が完成すれば、巨大タンカーが航行可能となり、やはり太平洋と大西洋を結ぶパナマ運河も渡れない船舶も行き来できるという。

 建設事業の雇用創出は20万人以上と見積もられ、観光・商業施設なども整備される計画で、ニカラグア政府は、現在4%台前後で推移する国内総生産(GDP)が、「運河完成後は10%台に跳ね上がる」とそろばんをはじく。ニカラグアは約600万人の国民の約45%が貧困状態にあるとされ、失業率は5割前後に達する。フランス通信(AFP)は「ニカラグアにとってまさに垂涎プロジェクトだ」と指摘する。

 昨年12月に着工式典が開かれ、建設と運営を請け負った香港ニカラグア運河開発投資(HKND)の王靖最高経営責任者(CEO)は、「歴史的な瞬間だ」と胸を張った。

 だが、興奮する事業者やニカラグア政府をよそに、プロジェクトには厳しい視線が注がれている。

 ニカラグア運河の全長は約278キロで、パナマ運河の3・5倍もある。総工費は500億ドルにも達し、HKNDが中心となって用立てるというが、大手米銀の関係者は「これほど巨額の資金となると投資銀行や国際金融機関から調達する必要があるが、苦労するのではないか」と冷ややかだ。

 パナマ運河でも拡張工事が進められており、AFPは「新しい運河を通すことは正当化できない」とする海運関係者の見方を紹介している。ニカラグア運河は、拡張後のパナマ運河よりも大型の船舶が航行可能だが、巨額のカネを投じて「第二運河」を通す必要性を疑う声は少なくない。

◆中国系企業への反発

 国を横断するような巨大プロジェクトが建設予定地の住民や環境に与える影響も、当然ながら大きい。

 とくに土地収用をめぐる懸念が強まっており、「十分な補償を受けられないのでは」と計画に反対する農民などがデモに多く参加している。また、運河全体の4割弱は、中南米第2の広さを誇るニカラグア湖を経由し、自然保護区を通過する。このため環境保護団体などが「生態系が破壊される」と批判を強めている。

 これらだけでも建設推進には逆風だが、住民らの不安をあおっている最大の要因がHKNDだ。同社の王CEOは、北京に本社を置く中国の通信会社、信威通信産業集団の会長を務めており、王氏が中心となって2012年にHKNDを香港に設立した。

 信威は物流やエネルギーなどインフラ関連の事業も手広く手がけている。だが、インフラ事情に詳しい世界銀行の関係者は「情報に疎い中南米で、IT業界の経営者が、これほど大規模で長期的なプロジェクトを担えるノウハウがあるのか」と首をかしげる。

◆背後に中国当局?

 さらに、HKNDと信威を率いる王CEO自身についても風評が飛び交っている。王氏自身はメディアのインタビューなどで否定しているが、中国共産党の幹部らに強い人脈を持つとされる。そのため、HKNDの背後で中国当局や軍の働きかけがあるのではないかとの観測が出ている。

 当の中国外務省は「プロジェクトは中国の政府や軍と関係ない」とし、HKNDによる「自主的な行為」だと説明しているが、鵜呑みにする向きは少ない。

 HKNDが握るニカラグア運河の運営権は50年間で、さらに50年間の延長が可能。その後にニカラグア政府に譲渡される契約となっているが、反対住民らの間には「1世紀に及ぶ事実上の中国の租借地だ」と反発する声が上がる。抗議デモでも、「中国人は出ていけ」との怒号がしばしば飛び交っている。

 民間企業を通じてでもニカラグア運河の“権益”を手中に収めれば、中南米の港湾や海上輸送の拠点をおさえられ、中国の船舶は太平洋と大西洋を容易に行き来することが可能になる。しかも、ライバルとなるパナマ運河は米国の強い影響下にあり、米国への大きな牽制手段を手にできる。

 中国は近年、中南米諸国への活発な「支援外交」を展開している。国際市場から事実上締め出されたアルゼンチンに対し、ダム建設などで巨額融資を表明。中国主導で設立する開発銀行を通じた援助への憶測も浮上する。そこには、米国と中南米の間にくさびを打ち、影響力を強めるしたたかな戦略が透けてみえる。

 ニカラグアは台湾と国交があるが、中国と外交関係がない。一見すると中国と疎遠だが、実は国交がないのを逆手にとり、民間主体のプロジェクトという形式をいわば隠れみのにして、米国などからの批判もかわしやすい。ニカラグアのオルテガ大統領が反米姿勢なのも中国には好都合だ。

 逆に米国にとっては当然面白くない事態だろう。ロイター通信によると、在ニカラグア米国大使館は、環境への影響などの詳細が明らかでなく、「情報開示の不十分で、事業の透明性が確保されるか懸念している」との見解を表明した。

 中国としては、ニカラグア運河を一日でも早く完成させ、インフラ整備の実績をアピールしたいところだが、摩擦は強まりそうだ。

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